教習物語  | *カイホウエンジン*

教習物語 

初日、さっそくホームシックにかかり、

ムカデにツッコミを入れる。


「でかいねん!お前!」




寮は二階建て。

喫煙は決められた場所でしかできない。

なので、灰皿のある玄関横に行った。


タバコを吸っていると、ひとりの人間が近寄ってきて、

タバコに火をつける。


金髪、上下白のジャージ。


沈黙。


キマヅイ。


「いつ入校したん?」

口火を切ったのは相手だった。


助かった。


その人は24歳で、土方の人だった。

ココへ来て初めてしゃべった人だった。


後々、この人がいてくれたおかげで、

合宿が楽しくなってきた。



二日目。

僕の部屋に新しく二人入ってきた。

二人とも24歳だった。


ひとりは中国からの留学生。

もうひとりは、学校の先生を目指す人で、

めちゃめちゃ親切な人だった。


この二人も、僕の合宿生活を

だいぶ楽にしてくれた。


なにより。

しゃべり相手ができたのは

本当にありがたかった。



三日目。

ようやくこの集落の輪郭がつかめてきた。


同時に、ヤンキーばかりだと思ってが、

全然そうではなかった。


むしろ。

誰にでも挨拶をするという、

すげぇオープンなコミュニティだった。


人を見かけで判断してたというより、

自分の頭の中で勝手にイメージを作り上げていた。



パンチパーマは高校生だった。



仮免試験でちょっとしたハプニングがあった。


なんと、修了検定で95点を取って表彰されてしまった。

さらに学科は満点で、賞与として1000円もらってしまった。


やたら目立ってしまった。


それから話しかけられることが

ぼちぼち増えてきた。


「運転うめー」


「天才」


言いたい放題だ。




でもね。

僕。

二回目なんすよね。

しかもATなんすよね。



そう言われるたびに、

ものすごきまづいんすよね。


まぁ、何人かには白状しましたが。


でも、これがきっかけで

後半戦が楽しくなってきた。


つづく